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産業革命・情報革命・AI革命——社会が大きく変わるとき、働き方はどう変わってきたか

仕事・生き方

第1弾では目的地を決めること、第2弾では自己効力感、第3弾では人間力をテーマにしてきました。

今回は少し毛色が違います。感情や体験ではなく、データと歴史で「なぜ今、収入の軸を増やすことが重要なのか」を考える回です。

わたしたちが生きているのは、大きな変化の只中です。副業ブームと言われているけれど、それはただの流行なのか、それとも構造的な変化なのか。その答えを、歴史の流れから読み解いてみたいと思います。

ここで使う視点は2つです。鳥の目——大きな時代の流れを俯瞰する視点。そして魚の目——今この瞬間、何が動いているかを読む視点。両方を持つことで、「なぜ今動くべきか」が見えてきます。

【鳥の目】革命が起きるたびに、働き方は根本から変わってきた

産業革命(18〜19世紀)——「手仕事」から「工場」へ

18世紀後半、イギリスで産業革命が始まりました。蒸気機関の発明により、それまで人の手で行っていた綿織物の生産が機械化されます。大量生産が可能になり、経済は急拡大しました。

でも、そこには影の側面もありました。それまで高い賃金を得ていた熟練の織物職人たちが、一夜にして仕事を失ったのです。

怒りを爆発させた労働者たちは、機械や工場を打ち壊す「ラッダイト運動」を起こしました。1811年から1817年にかけて長期間にわたって続いたこの運動は、単なる暴動ではなく、労働環境の改善を求める集団交渉の形態だったとも言われています。

しかし歴史はこの後、面白い展開を見せます。機械化によって大量生産された生地は新たな需要を生み出し、織物製造の仕事を増やしました。技術革新によって一時的に職が消えても、生産性の向上が新たな産業と雇用を生み出していったのです。

ここで重要なのは「変化に乗れた人」と「乗れなかった人」の差です。機械を壊そうとした人たちの気持ちはよくわかります。でも、機械を使いこなした人たちが次の時代を生き残った。

情報革命(1990年代〜2000年代)——「場所」から「ネット」へ

20世紀末、インターネットの普及が始まります。これが第2の大きな転換点です。

情報が瞬時に世界中を駆け巡るようになり、流通・販売・コミュニケーションの構造が根本から変わりました。本を買うために書店に行く必要がなくなり、音楽を聴くためにCDを買う必要もなくなった。

この変化が個人の働き方に与えた影響は大きかったです。

それまで「仕事をする」=「会社に所属する」が当然だった時代から、個人がインターネット経由で仕事を受注・発信・販売できる時代になりました。フリーランスという働き方が現実的な選択肢として広がり始めたのは、この情報革命があったからです。

クラウドソーシング、個人ブログ、SNSでの集客——今では当たり前に見えるこれらは、すべて情報革命の産物です。「会社に依存しない働き方」の土台は、この時代に整い始めました。

AI革命(2020年代〜現在)——「人間の作業」から「AIとの協働」へ

そして今、わたしたちは第3の大きな転換点の真っ只中にいます。

2022年11月のChatGPT公開以降、生成AIは急速に普及しました。これが過去の革命と大きく違う点があります。産業革命がブルーカラーの肉体労働を、情報革命が単純な事務作業を変えたのに対し、生成AIはホワイトカラーが担ってきた文章作成、図表作成、さらには人とのコミュニケーションまでもこなせるようになっています。

IMFは、生成AIによってAI代替リスクにさらされる人の数は世界の就業者の40%に及ぶと予測しており、特に先進国ではホワイトカラー職の割合が高いため、AI代替リスクを抱える雇用の割合は約60%に達するとしています。

ただし、これは「60%の仕事が消える」という意味ではありません。

生成AIの影響は「代替」と「補完」の二重性を持っています。企業内の人材で完結する内部労働市場では、生成AIは既存従業員の生産性を高める補完ツールとして機能します。一方、フリーランス市場に代表される外部労働市場では、仕事を奪う代替の圧力が強く、特にエントリーレベル人材の機会を奪う構造が実証研究で明らかになりつつあります。

つまり、AIをうまく使いこなせる人にとっては追い風に、そうでない人には向かい風になる。産業革命のときと、構図はまったく同じです。

【魚の目】今この瞬間、何が動いているか

副業解禁の流れと企業側の本音

2016年では85.3%の企業が副業を認めていませんでした。しかし2017年に政府が「働き方改革実行計画」を閣議決定し、2018年1月にはモデル就業規則から副業禁止の文言が削除されました。これをきっかけに「副業元年」と呼ばれる2018年以降、大手企業が次々と副業を解禁し始めました。

2024年時点で60%以上の企業が何らかの形で副業を認めており、三井住友銀行は2024年10月から全社員に副業を解禁するなど、大手金融機関でも動きが加速しています。

ではなぜ企業は副業を解禁し始めたのか。表向きは「多様な働き方の推進」ですが、本音はもう少し複雑です。

副業解禁のニーズが拡大している要因として、長年の景気低迷による終身雇用の崩壊が挙げられます。同じ企業に勤め続けても確実に収入が上昇するとは限らない、先行きの不透明な現代において、企業側も「終身雇用で従業員とその家族を守り続けることが当たり前ではない」という認識に変わりつつあります。

つまり、企業が副業を解禁しているのは、「個人のリスクを個人で管理してほしい」というメッセージでもあります。会社が守ってくれる時代が終わりつつある。その現実が、副業解禁という形で表れています。

フリーランス人口と市場規模の変化

数字でも確認しておきましょう。

2024年のフリーランス人口は1,303万人、経済規模は20兆3,200億円に達しました。10年前と比較してフリーランス人口は39.1%、経済規模は38.8%増加しており、コロナ禍という特殊要因を除くとフリーランス市場は確実に拡大しています。

日本のフリーランスの割合は労働力人口の18.8%(2024年)。アメリカの38.0%(2023年)と比べるとまだ低い水準ですが、2015年からの10年間で割合は32.4%増という拡大を示しています。

日本はまだフリーランス先進国のアメリカの半分程度です。言い換えれば、これからさらに拡大する余地があるということでもあります。

AIによってWeb・制作・ライティング業界で起きていること

このシリーズの読者の多くは、Web制作・ライティング・デザインなどのデジタル系のスキルを持っているか、これから持とうとしている人だと思います。だから正直に書いておきます。

フリーランス市場では「収入や案件単価が下がった」と感じる人が多く、案件の増加が収入向上にはつながっていないことが明らかになっています。特に低スキル・汎用的な業務では単価下落が顕著で、生成AIの進化による業務の一部自動化も影響している可能性があります。

これは厳しい現実です。でも同時に、こういうデータもあります。

スタンフォード大学らの調査では、生成AIを利用することでライティングタスクの作業時間が平均約69%削減(80分から25分へ)されるという結果が出ています。

つまり、AIを使いこなせる人は同じ時間で3倍以上の仕事をこなせるようになる。単価が下がっても、生産量を増やすことで収入を維持・向上させることができる。市場は二極化しつつあります。汎用的なスキルを持つ人には逆風、AIを使いこなして高付加価値を出せる人には追い風。

個人が複数収入を持つことがリスクヘッジになる理由

ここまでの流れを整理すると、こういうことが見えてきます。

  • 企業は終身雇用を維持できなくなっている
  • AIが単一スキルへの依存リスクを高めている
  • フリーランス・副業市場は拡大しているが、二極化も進んでいる

1社・1スキル・1収入源への依存は、構造的なリスクになりつつあります。わたし自身、1社依存のフリーランスとして実質的に会社員と変わらない状況にあることを、このシリーズの第1弾で正直に書きました。

複数の収入の軸を持つことは、もはや「欲張りな選択」ではなく「時代に合ったリスク管理」です。

【まとめ】鳥の目と魚の目で見えてくること

鳥の目で見れば、歴史は繰り返しています。技術革命が起きるたびに、変化に乗れた人が次の時代を生き残ってきた。産業革命のとき機械を使いこなした人が、情報革命のときインターネットを使いこなした人が、それぞれの時代の勝者になりました。

魚の目で見れば、今この瞬間、複数の変化が同時進行しています。終身雇用の終わり、副業解禁の加速、AIによる仕事の二極化。これらはすべて「個人が自分で収入の軸を持つ」ことの必要性を高めています。

こうした時代の変化を読んだうえで「では個人はどう動けばいいか」を 考えるヒントになったのが、このシリーズのベースにしている一冊です。

📚 この記事で紹介している本

神メンタル

神メンタル「心が強い人」の人生は思い通り

星 渉 著 / KADOKAWA

※ 商品価格はリンク作成時点の情報です。購入時に価格が変わっている場合があります。

副業ブームは流行ではありません。構造的な変化です。

だから、収入の軸を増やすことを考えているなら、「いつかやろう」ではなく「今動き始める」ことに意味があると、わたしは思っています。

次回・第5弾では、今回の「社会全体の変化」をさらに絞り込んで、Web業界の潮流を分析します。これからどの領域が伸び、どの領域が変わるのか——業界の地図を一緒に確認しましょう。

【参考文献・データ出典】