前回の第4弾では、産業革命からAI革命まで、社会全体の大きな変化の流れを見てきました。今回はその視点をWeb業界に絞り込みます。
わたし自身、Web制作・ライティング・自動化を軸にフリーランスとして仕事をしています。つまり、この記事で書くことは評論家の分析ではなく、当事者として日々感じていることでもあります。
だから正直に書きます。Web業界は今、面白い変化の真っ只中にいます。全体として仕事が減っているわけではない。でも「同じことを続けているだけでは通用しなくなっている」という感覚は、確かにあります。
何が変わって、何が伸びていて、何が求められているのか。整理してみます。
Web業界で今起きていること

「作れる人」から「設計できる人」へのシフト
数年前まで、「Webサイトを作れる」というだけで仕事になっていた時代がありました。HTMLとCSSが書けて、WordPressで制作できれば、それなりに需要があった。
でも今は違います。
ノーコードツール(Wix・STUDIO・Webflowなど)の普及で、専門知識がなくてもサイトを作れる人が増えました。AIを使えば、コードの生成も以前より格段に簡単になった。「作る」という作業そのものの価値が、相対的に下がっています。
その代わりに価値が上がっているのは、「設計できる人」です。クライアントのビジネス課題を理解して、どういうサイトを作るべきかを提案できる人。制作の後工程(集客・CVR改善)まで視野に入れて動ける人。コードを書く前の「考える仕事」の価値が上がっています。
受託制作の単価下落と高単価化の二極分化
Web制作市場では、単純な受託制作の単価が下落しつつあります。「LP1枚◯万円」「コーポレートサイト◯万円」という相場は、競合が増えて価格競争が進んでいます。
一方で、高単価案件は存在します。ただし条件があります。
- 制作だけでなく、マーケティングや業務改善も含めて提案できること
- 継続的な運用・改善まで担えること
- クライアントのビジネスパートナーとして機能できること
単発の制作案件で稼ぐモデルは厳しくなっています。継続契約・コンサルティング寄りのモデルへのシフトが、生き残る道のひとつです。
AIツールがWeb制作・ライティングに与えている影響
ChatGPTやMidjourney、Adobe Fireflyなど、AIツールとの連携が当たり前になってきました。2026年現在の現場の実感として、AIは「代替ツール」ではなく「補助ツール」として使うことで、効率とクオリティの両立が可能になっています。
ライティングについて言えば、「誰でも書けるような一般的な記事」はAIで代替されつつあります。でも「体験談」「一次情報」「独自の視点」を持つコンテンツはむしろ価値が上がっています。AIが生成できないものを書ける人が、次の時代のライターです。
これから伸びる領域

AIを活用したコンテンツ制作・マーケティング
越境ECやライブコマース、ソーシャルコマースの普及が顧客体験を豊かにしており、AIを活用したパーソナライズ商品提案も拡大しています。AIをコンテンツ制作やマーケティング施策に組み込める人材の需要は、今後も高い水準が続くと見ています。
「AIを使って記事を量産する」だけでは差別化できません。AIを使って質を上げながら、一次情報や体験を加えて独自性を出す——そのディレクション力が求められています。
Shopify・EC構築・越境EC
eコマースはコロナ禍の影響で急成長を遂げており、2025年以降もWeb業界全体の成長が続くと考えられています。日本のeコマース市場は約20兆円(2023年)、CAGR約8%と予測されています。
特にShopifyを中心としたEC構築の需要は根強い。越境ECへの参入を検討する中小企業も増えており、制作だけでなく運用・集客まで一貫して担えるShopify人材の需要は高いです。
わたし自身もShopify案件を複数抱えていますが、「作って終わり」ではなく「作った後どう売るか」まで提案できると、クライアントとの関係が継続しやすくなります。
業務自動化(Google Apps Script・Zapier・Make)
2025年のWeb業界では、業務効率化や新サービス創出のためのシステム開発が加速しています。
その中でも、ノーコード・ローコードの自動化ツールを使って業務を改善できる人材の需要が高まっています。Google Apps ScriptやZapier、Makeなどを使った自動化は、中小企業にとってコストパフォーマンスが高い投資です。
「Webサイトを作る」以外のところで価値を出せる領域として、自動化は注目しています。
LP制作・CRO(コンバージョン最適化)
集客よりも「集めた人を成果に変える」ことへの関心が高まっています。LP(ランディングページ)制作は、デザイン×コピー×マーケティング知識を組み合わせた仕事で、単純な制作よりも高単価になりやすい領域です。
A/Bテストや数字の改善まで提案できると、継続案件につながります。
変わる仕事・なくなりつつある仕事

汎用ライティング・定型コーディングの単価下落
「〇〇とは?」「〇〇のやり方」といった情報提供型の記事は、AIで生成できるようになりました。需要がなくなったわけではありませんが、単価は下落しています。
同様に、定型的なコーディング(テンプレートのカスタマイズ程度)も、AIが補助することで作業時間が大幅に短縮され、単価を維持しにくくなっています。
この領域で戦い続けるなら、生産量を増やすか、より上流の仕事(設計・提案)にシフトするかの選択が迫られます。
SEOの変化——AI Overviews時代の到来
2025年に入ってから、SEOの現場ではゲームチェンジとも言える大きな変化が起きています。AI Overview(旧SGE)やChatGPTの台頭により、従来の検索トラフィックが50%以上減少した事例も報告されています。
SGEの登場により、これまでの「検索上位を目指すSEO」は、AIに引用されるためのSEOへと変化しています。
これはWebライターにとって大きな変化です。「キーワードを詰め込んだ記事」が通用しなくなり、AIが参照したくなるような「信頼性の高い一次情報・体験談・専門知識」が評価される時代になっています。
独自性のないコンテンツは表示されてもクリックされにくい傾向が顕著になっています。逆に「体験談」「実測値」「社内の調査結果」など、AIが生成できない一次情報や現場の知見は差別化要素となり、SEOでも上位表示されやすくなりました。
ノーコード普及で変わるWeb制作の入口
Wix・STUDIO・Webflowなどのノーコードツールが実用的になり、特に小規模事業者やスタートアップにとって「スピード×費用対効果」の面で非常に有効になっています。
これは「制作の入口が広がった」ということでもあります。簡単なサイトはノーコードで作れるようになった分、プロへの依頼は「ノーコードでは対応できない複雑な要件」や「設計・戦略から任せたい」という案件に絞られていきます。
今求められているスキル

技術×ビジネス理解の掛け算
高単価な案件を獲得し、フリーランスとして長く活躍するには、技術力だけでなく、クライアントの課題を深く理解し、解決策を具体的に提案する力が求められます。これにより、より高単価での交渉が可能になります。
「コードが書ける」だけでなく「なぜそれを作るのか」を理解して動ける人が、長期的に選ばれます。
AIを使いこなして生産性を上げる力
AIを拒否する人と、AIを積極的に使いこなす人の生産性の差は、今後さらに広がっていきます。同じ時間でより多くのアウトプットを出せる人が、単価交渉でも有利になります。
ただし注意が必要なのは、「AIに丸投げ」ではなく「AIを補助として使い、人間の視点・体験・判断を加える」ことです。AIだけで完結するコンテンツや制作物は、差別化できません。
複数スキルを組み合わせた高単価化
制作×マーケティング、ライティング×SEO設計、自動化×業務コンサルティング——単一スキルではなく、複数を組み合わせることで、「この人にしか頼めない」という領域を作ることが重要です。
これはこのシリーズのテーマである「収入の軸を増やす」とも直結しています。
jasoが見ている景色

Web制作・ライティング・自動化の掛け算で感じていること
わたしが今やっている仕事は、大きく3つの軸があります。WordPress・ShopifyなどのWeb制作、SEO記事のライティング、そしてGoogle Apps Scriptを使った業務自動化です。
この3つを組み合わせることで、「Webサイトを作って、集客コンテンツも書いて、バックオフィスの業務も改善する」という提案ができるようになりました。単体では他の人と差別化しにくいスキルも、掛け合わせることで「それ全部できるんですか?」という反応をもらえることが増えています。
これからわたしが伸ばしていこうとしていること
正直に言うと、今のわたしはまだ「1社依存」から抜け出せていません。スキルはあっても、収入の軸が分散できていない。
だからこそ、このシリーズを書いています。次の第6弾では、ここまで整理してきた「目的地・自己効力感・人間力・社会の変化・業界の潮流」を踏まえて、実際にどう動いていくかを書きます。わたし自身の行動計画も含めて、一緒に考えていきたいと思っています。
まとめ

- Web業界は「作れる人」から「設計・提案できる人」へのシフトが起きている
- 汎用制作・定型ライティングは単価下落。継続契約・コンサル寄りへのシフトが生き残りの道
- 伸びる領域:AI活用コンテンツ、Shopify・EC、業務自動化、LP・CRO
- SEOはAI Overviews時代に突入。「一次情報・体験・専門知識」を持つコンテンツが価値を持つ
- 求められるのは技術×ビジネス理解の掛け算と、複数スキルの組み合わせ
【参考文献・データ出典】

